すすきの駅にほど近いビルの2階にある「BOSSA」。マスターの高橋久氏が1971年にオープンした同店は、10代から70代まで、幅広い年齢層の顧客に愛される人気店。夜ともなれば、広々とした店内の60席が一杯になる。
「男性客が多いけれど、とにかくいろんな人が来てくれますね。長くやってるけれど、誰が常連かわからないくらい(笑)。夜は、ウイスキーを飲みながらくつろぐ方が多いですね。ジャズを聴きながらお酒を楽しむというより、お酒を飲む傍ら、ちょっとジャズに耳を傾けるくらいの人が多いと思います(笑)」
曲は、訪れている人の年齢層や雰囲気を見ながら、バリエーション豊かなラインナップの中からチョイスする。「ピアノもボーカルも、ボサノバもほとんど網羅しています。ジャズに、この曲はいらないというものはないと思いますよ」と高橋氏。
ウイスキーのボトルキープもあり、カクテル類も人気。「BOSSA」は、ジャズをBGMに誰もが自由なスタイルで楽しむことができるジャズバーだ。
「BOSSA」に置かれているスピーカーは、JBLの技術を粋を集め開発されたスタジオモニター「M9500」。高橋氏は、これまで使ってきたものの中で、これが最高峰のスピーカーだと言い切る。
「JBLのスピーカーは、『PARAGON』、『EVEREST』と使ってきましたが、個人的にはこの『M9500』が最高ですね。ドラムやピアノなどの楽器の音が混じらずに、きちんと聴こえる。スタジオモニタースピーカーとしての実力を実感することができます」
サウンドにこだわる高橋氏は、店舗の内装にもこだわっている。レコーディングエンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーの録音スタジオを参考にして、床はコンクリート、壁は木材を採用しているのだ。
「実際に彼のスタジオに行って聴いたわけではありませんが、かなりいい状態だと感じています」
アンプは現在使用しているマーク・レビンソンの「No.336L」が、「今のM9500と一番相性がよくて、しっくりきます」と高橋氏。現在の「M9500」のサウンドに不満はないと語る。
「時代の変遷によって、音楽も変わる。この『M9500』は、その変化に対応できるスピーカーだと思います」
高橋氏は、高校時代からジャズに魅了され、ジャズ喫茶でのアルバイトが高じて、自ら店をオープンすることとなった。
「当時は、他人の聴いてないものを聴こうという、ファッション的なニュアンスが強かったですね。すぐ好きになり、ジャズが難解だとは思ったことはありませんでした。NHK FMの『ジャズフラッシュ』を頼りに、新譜を購入していました」
ジャズの魅力は、いくつになっても、常に新たな曲に触れて楽しめることにあると語る高橋氏。長年親しんでいても、新たな発見が絶えないという。
「クラシックは、ある程度聴く曲が決まってくるだろうし、ロックは70歳になって出会う新たな曲に感動しないでしょう。でも、ジャズは70歳になっても、20代のミュージシャンの新曲に感動できる。最近では、イタリアのレーベル『Deja Vu Records』がおもしろい。ジャズは、常に新たなものを聴こうという気持ちが湧いてくる音楽ですね」
これからも高橋氏は、「BOSSA」で新たなジャズの魅力を発信し続ける。