JBLプロフェッショナルスピーカーの歩み

JBLの創始者ジェームスB.ランシングは、JBL社創業以前より音響エンジニアとして音楽産業に深く関わって来ました。また、カリフォルニア州、ロスアンジェルスに本拠を構えるJBLは、ハリウッドを中心とした映画産業とも深い関わりを持ちながら発展してきました。そして1970年代、JBLはプロフェッショナル事業部設立により、本格的にこれら映画・音楽産業の世界へ足を踏み入れて行くことになります。JBLのプロフェッショナルスピーカーの歩みを追ってみましょう。

ジム・ランシングと映画・音楽産業との出会い

JBLの創設者、ジェームスB.ランシングは1927年、自らランシング・マニュファクチャリングを設立します。ここで彼は当時まだ始まったばかりのトーキー映画のための劇場用サウンドシステム、シャラホーン・システムを開発します。さらに彼はその技術を小型2ウェイのシステムに凝縮した世界初の本格的スタジオモニター、アイコニックを開発。アイコニックはその後世界のモニタースピーカーの原形となる、画期的なスピーカーでした。


1941年、彼の会社はアルテック社と合併し、アルテック・ランシング社が生まれます。技術担当副社長に就任した彼は、ここで傑作ユニット604 DUPLEX同軸スピーカーを開発します。このユニットとその系列機を収めたモニタースピーカーは、JBLにその座を譲る70年代まで、スタジオモニターの定番となって行きます。また、「ボイス・オブ・シアター」と呼ばれる映画上映用スピーカーシステムを開発すると、世界中の映画館が導入。アルテック・ランシング社はジム・ランシングの功績により、映画・音楽産業界を席巻します。


1946年、ジム・ランシングはプロフェッショナル・クオリティーを持った家庭用スピーカーを造る事を自らの使命とし、JBLの前身となるジェームスBランシング・サウンド社を設立します。しかし、彼のこれまでの功績を知る映画・音楽産業界は、JBLにプロ市場向けの高性能スピーカーの開発を期待します。JBLは意匠を尽くした家庭用の高音質スピーカーシステムの開発を続けながらも、プロ市場へ様々なスピーカーを提供していく事となります。

  • 劇場用サウンドシステム シャラホーン

  • 世界初本格スタジオモニター アイコニック

  • ALTEC 604 DUPLEX

  • ALTEC A4シアターシステム

  • ジェームスBランシング社時代のシアターシステム

JBLスタジオモニターの誕生

1960年代初頭、ステレオLP時代の幕開けと共に、音楽産業界はそのレコーディングの基準となる優れたモニタースピーカーを必要としました。JBLはキャピトル・レコードと組み、新しいスタジオモニターの開発に取りかかります。C50SM/S7と呼ばれた2ウェイのそのシステムは、ジム・ランシングの造ったアイコニックのJBLバージョンとも言えるものでした。C50SMモニタースピーカーは当時、キャピトル・レコードはもとより、CBSコロンビア、デッカ、リバティー、MGM、ヴァーヴ、RCAビクター、リプリーズなどのレコーディング各社に採用され、また米国ABC放送を初めとするテレビ、ラジオ局で広く活躍しました。ビートルズが渡米した折り、彼らのプロデューサーであったジョージ・マーティンは、アメリカの幾つかのスタジオで耳にしたJBLモニターのサウンドにショックを受け、後にアビーロードスタジオとして有名になるEMIスタジオへ導入しました。ビートルズの成功が、JBLをイギリス、ヨーロッパの音楽産業界に広めた、とも言えるかもしれません。

JBL初期のスタジオモニターD50SM

JBLモニタースピーカーが設置されたスタジオ

スタジオモニターへの本格参入

JBLはこのC50SMの成功を足掛かりに、さらにプロオーディオ産業への進出を本格化させるべく、1970年プロフェッショナル・ディビジョンを発足させます。そして生まれたのが、4320を初めとする4300シリーズ・スタジオモニターです。4300シリーズはモータウンやワーナー・ブラザース、EMIなどの米国企業のみならず、ドイツ・グラモフォンやロンドン・デッカなど、イギリスやヨーロッパ各国、そして日本の音楽産業界でも標準モニター化されて行きます。そればかりか、旧ソ連や中国などの共産圏の音楽産業界にさえも導入されて行きます。その背景には、60年代から70年代にかけて一気に加速した、電子楽器を用いたロックミュージックの世界的な流行があります。ロックの流行により、レコード業界はこれまで以上に広くフラットな周波数特性と低い歪み率、そして耐入力の高さと高い能率、広いダイナミックレンジを必要としたのです。これらの要求に高いレベルで応えられるスピーカーシステムは、JBL以外に無い、とエンジニア達に言わしめ、JBLはアルテックに代りスタジオモニターのトップシェアを獲得します。

4300シリーズスタジオモニター

70年代のキャピトルのレコーディングスタジオ

JBLスタジオモニターの黄金期へ

70年代も中旬に差し掛かると、音楽シーンはさらに広帯域で、さらに大きなダイナミックレンジを持つモニタースピーカーを要求します。JBLのスタジオモニターはフラグシップ・モニター4350を筆頭に、4331/4333を中心とした新しい世代に入ります。そして、4ウェイ・モニターの傑作、4343とその後継機4344が登場すると、JBLのモニタースピーカーはレコード業界のみならずコンシューマーのオーディオマニアにとっても憧れのスピーカーシステムとなります。特徴的なブルーのバッフルとウォールナットの外装を纏ったJBLスタジオモニターは、ここに黄金期を迎えます。


誕生から半世紀、JBLのスタジオモニタースピーカーの潮流は留まる所を知らず、低歪、ワイドレンジ化を図りながら音楽産業の発展と共に進化を続け、現代の最新モデル、4367や4349へと継承。さらに未来へ向かって進化を続けて行きます。

  • 70年代後期のスタジオモニター・ラインアップ

  • 80年代を代表するスタジオモニター 4344

  • 4344Mk IIが設置された90年代のスタジオ

  • 最新のスタジオモニター 4367WX

フェンダーに認められたJBL

ジム・ランシングはJBL創業直後、ワイドレンジ・スピーカーユニットの傑作、D130を生み出しました。D130はエレキ・ギターの発明者、レス・ポールによってギターアンプに組み込まれたことで、MI(Music Instrument:楽器)用スピーカーという新たな需要が生まれます。フェンダー社のレオ・フェンダーは自社のギターアンプにふさわしいスピーカーとしてJBLを凌ぐユニットは無い、と公言。JBLはフェンダー仕様に改良したスピーカーユニット、Fシリーズ(D110F~D140F)の供給を始めます。1960年代、電子楽器を用いたロックミュージックのブームが音楽界を席巻し始めると、JBLのスピーカーユニットは世界中の様々な楽器用アンプ、電子楽器に組み込まれ、現在も第一線で活躍すると共に、ビンテージアンプとしても高い人気を誇っています。

フェンダー社公式ユニットとして採用されたD130F

フェンダー・ツイン・リバーブに搭載されたD120F

JBLのSR用スピーカー

JBLのMIスピーカーは、ステージモニターなどのSR(Sound Reinforcement:補助拡声用)スピーカーとしてバリエーションを増やし、高能率なMI用ユニットをコンパクトでヘビーデューティーなバスレフキャビネットに納めた<>4600 Cabaretシリーズへと発展します。これらのモニタースピーカーは、小型ながら高い音響出力とJBLならではの聴き取りやすい明瞭な音質から、世界中の一流ミュージシャン達に愛用されて来ました。また、小型ユニットを一列に配置したトーンゾイレ(ライン・アレー)型SRスピーカーは、テレビ局等のモニター用として広く音楽番組などに使用されてきました。さらに、MIシリーズ、Gシリーズなどのローコストモデルが発売され、セミ・プロミュージシャンにまでそのユーザー層を広げました。

4600 Cabaretシリーズ

JBLのPAスピーカー

高感度で高出力なJBLスピーカーは、PA(Public Address:大規模拡声用)スピーカーとしても大活躍をしています。劇場用スピーカーに始まったこれらの拡声用スピーカーは、モニタースピーカー同様70年代に入ると音楽イベントと共に大規模化し、本格的なPAシステムとして製造されるようになります。当時は楽器用高能率ユニットをホーン型キャビネットに納めた大型システムをステージ袖にうず高く積み重ねたものが主流で、バリエーションの豊富さから小規模なライブハウスから大規模な野外コンサートに至るまで、ありとあらゆる音楽の現場で活躍しました。また、ドジャース・スタジアムやヤンキー・スタジアムなどの野外球場や競技場にも採用され、各国で催された様々な国際的スポーツイベントでも大活躍しました。さらに、JBLの高能率なウーファーやドライバー、ホーンなどのコンポーネント・ユニットは世界中のPA業者のオリジナルPAシステムに組み込まれ、コンサートやイベントを陰で支えてきました。


高感度で高出力なJBLスピーカーは、PA(Public Address:大規模拡声用)スピーカーとしても大活躍をしています。劇場用スピーカーに始まったこれらの拡声用スピーカーは、モニタースピーカー同様70年代に入ると音楽イベントと共に大規模化し、本格的なPAシステムとして製造されるようになります。当時は楽器用高能率ユニットをホーン型キャビネットに納めた大型システムをステージ袖にうず高く積み重ねたものが主流で、バリエーションの豊富さから小規模なライブハウスから大規模な野外コンサートに至るまで、ありとあらゆる音楽の現場で活躍しました。また、ドジャース・スタジアムやヤンキー・スタジアムなどの野外球場や競技場にも採用され、各国で催された様々な国際的スポーツイベントでも大活躍しました。さらに、JBLの高能率なウーファーやドライバー、ホーンなどのコンポーネント・ユニットは世界中のPA業者のオリジナルPAシステムに組み込まれ、コンサートやイベントを陰で支えてきました。

  • 「70年代初頭のPAスピーカー

  • フェスティバルで使用されたJBLのPAスピーカー

  • 80~90年代のモジュール型PAシステム

  • 最新のPAスピーカー VERTECシステム

JBLのシアタースピーカー

JBLは創業初期、小規模ながら劇場用スピーカーも手掛けていましたが、「ボイス・オブ・シアター」の名を轟かしていたアルテック・ランシング社の牙城を崩すことは出来ませんでした。1970年代初頭、社内にプロフェッショナル・ディビジョンが発足すると、耐入力と能率を高めた優れたスピーカーユニットを続々と開発し、これをホーン型エンクロージャーに納めたシステムを劇場用として広く供給するようになります。これらのシステムは世界中の映画館に導入され、JBLは映画産業界でも徐々にシェアを延ばして行きます。

70年代のJBLシアタースピーカー

THXシステムの誕生

80年代になると、スターウォーズで知られるルーカス・フィルムが劇場の上映システムの質の向上を訴え、THXという映画館の品質基準を設けたライセンス制度を発足させます。この厳しいTHXライセンスに認定された最初のスピーカーがJBLでした。以降、JBLのTHXシステムは世界中の映画館で活躍。JBLはシアタースピーカーでもトップシェアを誇ることになります。

初期のTHX認定システム

現代のTHX承認シアターシステム

ハリウッドとJBL

ロスアンジェルスに本拠を置く、オスカー像とアカデミー賞で有名な映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences)は、1984年、アカデミー会員のためのプレミア上映を行う専用劇場「サミュエル・ゴールドウィン・シアター」にJBLの最新劇場用音響システムを導入します。以降、アカデミー・シアターは常に最新鋭のJBL音響システムが備わった、映画館のリファレンスと呼ばれるシアターとして知れ渡ります。


一方、映画の製作現場でも、JBLのスピーカーシステムが大活躍していきます。ドルビー研究所やワーナー・スタジオ、20世紀フォックス・スタジオなど、ハリウッドの著明な映画スタジオやダビングルーム、ポストプロダクションにJBLスピーカーが採用されています。映画用スタジオは小さな映画館と言える広さと設備を持っており、ここで録音された音が実際に映画館でどのように聞こえるかをモニターする必要があるため、今や映画館のスタンダードとなったJBLシアタースピーカーは必須アイテムとなっているのです。JBLのシアター用スピーカーはハリウッドの映画産業と共に発展を遂げます。

  • 映画芸術科学アカデミーの最新式シアター

  • 映画制作現場で活躍するJBLシアターシステム

  • 映画館同様の設備を持った映画用スタジオ

JBLのマルチプレックス用システム

バージン・シネマなど、シネマ・コンプレックス型の複合映画館では、JBLの最新型スクリーン・アレー・システムが活躍しています。これはJBL独自のバイラジアル・ホーン技術を発展させ、スタジアム形式の劇場においても均一な音圧分布が得られるよう垂直指向性を最適化したシステムです。2002年、JBLはこれら最新のスクリーン・アレー・シネマシステムの開発の功績によって、再びアカデミーの科学技術賞を受賞しています。これはJBLの創設者ジェームスB.ランシングがシャラホーン・システムの開発によって同賞を受賞して以来、70年を経ての快挙でした。

最新のスクリーンアレースピーカー

JBLスクリーンアレーが設置されたシアター

Pro Sound Comes Home!

2005年、JBL Professionalは長年にわたる音楽界への献身を称えられ、レコーディング・アカデミーからテクニカル・グラミー賞を授けられました。音と音楽の生み出される現場に立ち会って半世紀、JBLは常にその感動と興奮をありのままにリスナーに伝えることを使命としてきました。JBLのスタジオモニター・スピーカーは、スタジオクオリティーの高品位サウンドを家庭で手軽に楽しむことを可能にします。また、JBLがプロフェッショナル市場向けスピーカー・システムの開発で得た先進の技術や豊富な知識、様々なノウハウは、すべての家庭用JBLスピーカーシステムにも活かされ、その快活で明瞭なJBLサウンドを支えています。JBL プロフェッショナル譲りのホーン&コンプレッション・ドライバーを搭載したJBLの中大型スピーカーで構築されたオーディオシステムなら、ライブ会場や映画館に迫る臨場感で音楽や映画を鑑賞することができます。また、JBLのホームシアター用センタースピーカーは、そのせりふの明瞭度と声の質感において、メイン用スピーカーに伍する高い能力を備えています。すべてのJBLスピーカーには、「優れたスピーカーとは、その用途に限らず優れたサウンドを提供してくれるものでなくてはならない」というJBLエンジニア達の信念が貫かれています。音楽産業、映画産業のいずれとも密接な関係を保ち、発展し続けて来たJBLは、マスターテープやサウンドトラックに納められた音の総てを知っています。JBLだから聴こえる音、JBLだからこそ感動できる音の世界を、ご家庭で体験してください。

JBL Professionalは2005年にテクニカル・グラミー賞を受賞

最新のJBLスタジオモニター MODEL 4349